
「紙芝居面白かったね。」
「だね。」

「いっぱい笑ったらおなかすいちゃった。」
「だね。」

「いいにおいする。」
「だね。」

「……。」
「だね。」

「いや、言ってない。」

「あ!! 松茸!!」
「聞いてない……。」
「待ってーーーー!!」

だいちゃん
「うわーーーー!! すごい数だよー。見て、ぐりーんまん!!」
「ぐりりんです。ほんとだ!! 全部松茸だ。」
「なんか、書いてあるよ……。」

マツタケ(松茸、Tricholoma matsutake(S.Ito et Imai) Sing.)は
キシメジ科キシメジ属キシメジ亜属マツタケ節のキノコの一種。
養分の少ない比較的乾燥した場所を好む。
秋にアカマツやコメツガ、ツガ、ハイマツ、エゾマツ、まれにクロマツなどの
単相林のほか針葉樹が優占種となっている混合林の地上に生える。
マツタケの仲間にはよく似たキノコが多数確認されており、採集、分類、購入の際には十分注意を要する。

「学名も、"matsutake"って入ってる。」

???
「そうだよーん。日本人のマツタケへの愛着・研究から学名に(Tricholoma matsutake)と日本語が使われるようになったのんのん。」

「いいにおいだなぁ。」

???
「松茸は、マツタケオールによる独特の強い香りを持ち、日本においては食用キノコの最高級品に位置付けられているのんのん。」

「へぇ~。」

「てか。ぐりりん、喋り方きもちわるいよ。」
「ぼ、ぼく、何もしゃべってないよ。」

「え・・・。」

![]()
「・・・・・・。」

「松茸仙人だーよー。」

![]()
「・・・・・・。」

「松茸のことなら、なんでも知ってるよー。」

![]()
「・・・・・・。」

「えー松茸は、日本では縄文時代から―――。」

「ちょ、ちょっと待って!! なんでちょっと語ろうとしてんの?? 興味ないから!!」

「・・・・・・。」
「行こう!! ぐりりん!!」
「う、うん……。」
「・・・・・・。」
「ま、まだ、こっち見てるよ……。」
「だめだよ。ちょっとかわいそうだけど、お母さんが、変な人は無視しなきゃだめだって言ってたんだ。」
「なるほど。そうだね。」

「・・・・・・(泣)。」

???
「あ、あのー。」
「・・・・・・?」
「その話、聞かせてもらえませんか??」

「もちろんですともー。」

「日本のキノコ食文化の歴史は古くてね、縄文時代中期(紀元前2000年頃)の遺跡から、
縄文人がキノコを食物として利用していたことを示す遺物(キノコ形土製品)が多数発見されていて、
岡山市の弥生時代の百間川・兼基遺跡から、マツタケを模した「土人形」が出土しているのです。」

「えー!!松茸の人形ですかぁ??」

(な、なんて、いいリアクションなんだ……。)

「さらに、日本書紀には応神天皇に「茸」を献上したことが記されてるのです。
万葉集には奈良の高圓山のマツタケの短歌が載ってるのです。」

「へぇ~。あの万葉集にもですかぁ~??」

(なんて、素敵な笑顔なんだ……。)

「平安時代になると当時の貴族が松茸狩りを季節の行事として楽しむようになって、
古今和歌集、古今集などにもしばしば松茸の歌が詠まれているのんのん。さらにさらに、安土桃山時代になると、武士も松茸狩りをしていた様子が記録として残されてて、
江戸時代になると一般の人たちも松茸を食べていたのです。」

「へぇ~。江戸時代になって、私たち庶民のもとに帰ってきたんですね。」

(あぁ~。なんて、いいにおいなんだ……。)

「そんな松茸ですが、日本人以外の人々にとって、松茸の臭いは、耐えがたい程の悪臭であるようです。ヨーロッパで松茸を食べるときは、オリーブオイルを大量に使って臭いを消します。
また、生物であれば何でも食用にしてしまうと言われている中国の人々でさえ、この松茸は悪臭であり、食べることはなかったと言われてるんですな。」

「へぇ~。すごいですね。」

(あぁ~。めちゃくちゃにしたい……。)

そして、あたりは少しずつ暗くなり……。

「あの……、ところで、お名前は、なんというのですか??」

「それは、言えません。」

「どうしてなのですか??」

「それは……。」
プルルルルル……プルルルルル……
「ごめんなさい。ちょっと向こうで電話してきますね。」
「はい……。」
「彼氏。いるのかな……。」
「しかし、遅いなぁ……。」
「!!!!!!」
松茸仙人は、自慢の松茸がすべて無くなっていることに気付いた……。
「まさか、彼女は……。」
「彼女が、怪盗だったとは……、まったく気付かなかった。私はすっかり盲目になっていたようだ。」
「だが、彼女にはひとつ誤算があった……。」
「私が、彼女に恋をしたことだ……。今度は私が、彼女を盗んでしまいたくなった。それは、遊びではなければ本能でもない。ただ……、私の松茸が彼女を求めてしまったのだ……。」
「そう……、それはまるで……、日本人の松茸への愛が、すでに遺伝子に刻印されているのと、おなじように……私の松茸に刻印されてしまった。」

シナリオ:福尾 雄太
イラスト:好村 俊一
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